「こら、早く起きろ!」



そう言って、お兄ちゃんは、私の布団を引き剥がそうとした。

私はそれに抵抗して、必死に布団にしがみついた。



「さくら、遅刻するだろ?」



そう、優しく言われると、私は弱い。



「・・・」



お兄ちゃんといっても、本当のお兄ちゃんじゃない。

小学四年生の時、お母さんが再婚した相手の、連れ子だったのが、一つ年上の拓真お兄ちゃん。

私は、お兄ちゃんのことが、昔から好き。

だけど、お兄ちゃんは、私の気持ちなんて知らない。

昔は無邪気に好きだって言えたけど、高校生にもなって、そんなこともう言えない・・。



「今日から新学期だろ?早く準備しろよ?」



そう言って、お兄ちゃんは、私の頭を優しく撫でて、部屋から出ていった。



「・・・」



お兄ちゃんには、昔から私の頭を撫でる癖がある。

私は頭を撫でられるたび、嬉しいけど、心が苦しくて、胸が締め付けられる・・。

それに、お兄ちゃんには、ちゃんと彼女がいる。

優しくて、可愛い、可憐な花みたいな彼女。


私は、制服に着替え、部屋を出た。



「やっと起きたか」



そう言ってお兄ちゃんは、優しく微笑んだ。

また、胸が締め付けられる・・。

私は何も言わずに、朝食が用意されたテーブルに座った。



「ほら、マーガリン塗ってやるから、パンかして?」



優しくしないでよ、お兄ちゃん・・。

優しくされると、嫌いになれないよ・・。



「・・・いい、自分でする」


「汚すなよ?」


「・・・うん」



私、もうそんなに子供じゃないよ?

お兄ちゃんに、いつも子供扱いされるたび、悲しくなる・・。

辛くなる・・。