「もう………うるさいなぁ……………春歌ちゃんは〜」
「はっはふっ!?」
(訳:名前呼びされたことにたいそう驚いています)
「そんなに言うなら………この美味しそうな唇を奪っちゃおうかな〜?」
や、ヤバイ!
コイツ、完全にキャラ変わってる!
ドSだ!ドSだ気をつけろ藍野!
「ひゃっ、ひゃだ〜。はひゃひて〜!」
(訳:やっ、やだー。はなしてー!と言っています)
「ん?なんて?聞こえないなぁ。」
黒瀬は私の唇をそーっと指先で撫でて、私の反応を面白そうに見ている。
くそーっ、コイツそういえばそういう奴だったな!
「ほへんって!はんへほふふはらははひて〜!」
(訳:ごめんって!何でもするから離して〜!と言っています)
黒瀬の親指の力はますます強くなっていって、私の滑舌もますます悪くなっていく。
私が必死で抵抗すればいいはずなのに、なんでか体が動かない。
まるで、黒瀬の行為を受け入れているみたいだ。
なんで!?マジでなんなの!?
コイツ、名前が“黒瀬”なだけに、黒魔術でも使えんのか!?
私の口での抵抗を黒瀬は聞き落としてはいなかった。
それが逆に足取りとなる…………。
「藍野………。何でもするって言ったな?」
あぁぁぁぁ………これは、間違いなく地雷踏んだやつだな。
「ひ、ひひはひたへ〜…………」
(訳:い、言いましたね〜…………と言っています)
「じゃあさ、俺に今すぐキスしてよ。そしたらこの手を離してあげるからさ。」
「ひふ!?へふは……?」
(訳:キス!?ですか……?と言っています)
黒瀬の親指は、もう限界、というほど私の唇にぬめりこんで来ている。
しかも、地味に痛い。
多分さっきのパンチのお返しだ。
「ひふひはいははいへふは……?」
(訳:キス以外はないですか……?と言っています)
「うーん……まぁ、クールな藍野様にいきなりキスは難しいかな。それなら、俺に抱きつく、でもいいよ。」
「はひふふ………」
(訳:抱きつく………)
それも嫌だな………
だがしかし、しょうがない。
多分これ以上は血が出てきそうだ。
唇の安全第一だから。
「ははっひゃはら……ははひへ。」
(訳:分かったから……離して。)
「うん。」
さっきまで押さえつけられてた私の唇が開放された。
少しだけ、ヒリヒリする………
そして、ただならぬ緊張感。
心臓が…………死にそう。
「少しだけ……だから。」

