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「ふぅ…………」
…………あー、気持ちよかった。
さすが大豪邸のお風呂。
超綺麗で豪華だった。
ただ、どれがどれだか分かんなくてテキトーに使ったシャンプーが、さっきの黒瀬から香ったシャンプーの香りとおなじだったことに少々の焦りを感じた………………。
いつもの寝間着に着替えて、ゆっくりとドアを開ける。
人の気配は無く、しぃんと静まり返った黒瀬家。
今でも信じられない。
まさか、軽いストーカーと同居だなんて。
これは良く出来た夢だと思いたい。
…………だけど、夢はなかなか覚めないみたいだった。
少し歩くと、広い家中に足音がこだまする。
階段をのぼって2階に行くと、踊り場の手すりにもたれている優里さんを発見。
「あ、お風呂お先しました……。」
人見知りなりの精一杯。
必要最低限の言葉は喋れないといけない。
「あぁ、全然大丈夫だよー!」
優しく微笑む優里さん。
…………一番怒らせちゃいけない人。
「じゃあ私はこれで。」と、部屋に戻ろうとした時。
「あ、ちょっと待って」
と、優里さんに引き止められる。
「あのさ、皐月とどう?上手くいってる?」
「???はい?」
上手くいってる?いくわけない。
「上手くいってる…………ことはないですね。大抵ストーカーされてるんで。」
そう冷たく切り離すと。
「…………ッハハハハハハ!!」
何故か優里さん大爆笑。
「アハハハ!まぁ呆れた!皐月のやつ、ストーカーだなんて!!」
お姉サーン、どうにか止めてやってくださいよー。
「アイツはね、昔から愛情表現が苦手なやつでね。家族が悪いのかな。両親はふたりとも皐月には小さい頃からかまってあげられなかったの。だからさ、皐月も皐月でひねくれものになっちゃって。“好き”という感情を知らなかったのかも。というか、知ろうとしなかった。だけど、何故か春歌ちゃんにはずいぶんと心を開いてるみたいでね?だからどうか弟と仲良くしてあげて欲しいんだ。」
…………え。
「心を開いてるだなんて、そんな。か、勘違いですよ……」
「うーん。そうとは思えないんだがな………」
いやいや、勘違いだって。
アイツが私に心を開いてる、じゃなくて私を嫌っているの間違いでしょ。
……でも、なんか可哀想になった。
愛情表現を知らないって………………
それでも、黒瀬にはきちんと友達(?)もいるし、明野さんたちとも普通に接してるじゃん。
やっぱり自分の家のことを、やすやすと信用してない人に任せないからね。
でもその“好き”と優里さんが言う“好き”は、違う意味なんだと思う。
まぁ、黒瀬が私のことを好きだなんてことは絶っ対ありえないけど。
……………絶っ対、ありえないけど…………?

