キリトが来なければいいと思いながら、彼の来る方向を探して、辺りを見回した。

潰れた倉庫らしい廃屋の中は、だだ広っくて、

隙間から吹き込んでくる風に、爪先から冷えが上がってくるようだった。


「……あんたさ、キリトとどこまでヤったんだよ…?」


無視していると、

「答えろよ…おい!」

と、ナイフの先端を鼻の先ギリギリまで近づけられた。


「……あなたに言う必要なんか、ないから…」


「ふん…そうかよ。どうせ手練手管とかで、あのキリトを手なづけたんだろ…?」


言って、相変わらずニヤついた笑いを貼り付けた。