あけられたワインを、グラスに分けて注ぐと、軽く乾杯をした。


「……キリト、こないだの話は、あんまりめどが立ってなくて……」

最初に謝ると、


「ああ…別に、かまわない…。……俺には、まだ歌える場所があるから…」

と、キリトはグラスを空けた。


彼にワインを継ぎ足して、自分でも新たにワインを注いだ。


続けざまに何杯かを飲んで、キリトが、


「アヤ、タバコ吸ってもいい?」


と、訊いてきた。


「うん、いいけど…ねぇキリト、前から聞きたかったんだけど……」


私の問いかけに、キリトが「なに?」と、首を傾げる。


「キリトは、なんでタバコを…? ……別にたいしたことじゃないんだけど、

キリトは歌うために、その…喉を大事にしたりしないのかなって……」


タバコを出したキリトが、「ああ…」と、声に出す。


「……喉は、大事にしてる…だから、タバコはたまにしか、吸ってない……1日吸わないことも、よくある…」


取り出したタバコを、キリトが指で弄びながら話した。