「そんな……」


何かいいたそうだけれど、その後の言葉が見つからないようだ。


その時だった。


黒いスーツの男が２人、ステージから下りてきてこちらへ向かってくるのが見えた。


生徒たち全員が固唾を飲んでその様子を見つめている。


さっきまで話していた男とは別人だが、その威圧感はさっきの男以上だった。


２人の男が透明な部屋の前までたどり着いた時、ステージ上から声が聞こえて来た。


さっきの男だ。


「さて、準備が整いました。それでは欲望のバトルを開始します！！」


男が高らかに宣言すると同時に、鳴き声が響き始めた。


ついに始まってしまう。


あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。


心臓はドキドキと高鳴り、手のひらに汗が滲んだ。


「記念すべき第一回の挑戦者は……山田泰一と宮田幸大！」


名前を呼ばれた２人がビクリと肩を震わせた。


山田泰一、１年の頃からレスリング部活に所属していて地区大会で優勝経験がある。


宮田幸大、2年生になってからの転入生、勉強もスポーツも人並みで、目立った生徒ではない。


これだけでもその差は歴然としていた。