「お前の逃げ込む場所は近いな」
大きなため息を吐いて、片手で頭を抱える一番会いたくない男。
「社!?あんた早く教室帰ってよ!!」
「何だと!?せっかく迎えに来てやったのに」
私を李歩から引き剥がそうとするから、意地でも離れまいと力を込めた。
「あんた達、痛い!!」
「ごめん!!」
「悪い」
「とりあえず、チャイムも鳴るし教室に戻った方がいいよ、2人とも」
「浩輔!!!!」
浩輔……って社の名前だよね。
社を呼ぶ綺麗な女の先輩。
黒髪のセミロング、少しつり上がった猫目にグロスを塗った艶やかな唇。
足が細くて、長い足。
全部、私にないものばっかりだ。

