優しい先輩と俺様と私。






「先輩も苦手な事あるんですね。何でもそつなくこなしてるイメージがあったんですけど」


「そりゃ、僕だってあるよ。何でもできたら嬉しんだけどね。……何もかも窮屈になる時だってあるし、僕だって皆と一緒だよ」


先輩の笑顔に陰りが見えた。


窮屈って言葉も、暗い顔も先輩には似合わない。


先輩はありがとねってドライヤーを私の手から取って、片付けた。


「そうだ、松下さんも本読むんだよね。どんなの読むの??」


「私は小説をよく読むんですけど基準はキャラですかね。好きな雰囲気を持ってるキャラの本なら繰り返し何回も読みますよ。本の中でしか会えませんから」


「理解者発見。僕もそう思うんだけど友達に話したら分かってもらえなくてさ。それ以来誰にも言ってないんだ。こんな近くに話が合う人がいたなんてね」


嬉しそうに顔をほころばせる先輩。


「私も嬉しいです。先輩に喜んでもらえて」


コンコンとドアを叩く音がすると先輩はドアを開けた。


「ごめんね、せっかく来てもらってるのに遅くなっちゃって」


おばさんがお盆に2人分のケーキと飲み物を乗せて運んできてくれていた。