「どうしたの、アンナ。この前までは、あんなに元気だったじゃん」
「ソウスケ…うん。この前までは、ね」
ソウスケの言う『この前』とは、いつのことだろう。
本人に直接聞けばいいだけの話なのだが、ここにはカエデとソウスケの2人しかいないという設定上、声を出すことすら出来ない。
「ねぇ、アンナ…部屋から出てきてよ。僕らはアンナにまた会いたいから来たんだよ?」
「うん。でも、今はダメなの」
今はダメ。
アンナの言葉が分からず、また頭を悩ませる。
じれったい。
直球で聞けばいいのに。
気付けばそう思っていた私は、無意識に扉に手をかけていた。


