『可愛くなった』この言葉はあたしがずっと欲しかったもの。
やっと言ってくれた。
あたしは海斗君のその言葉をずっと待ってたんだよ?
その為に頑張ってた。
嬉しすぎて涙が止まらない。
「これ以上可愛くなって欲しくなかったんだよ!
だから俺は作戦失敗とか言って逃げたんだ。
“問題が発生しない限り作戦は失敗しない”とか言ったけどその時から俺はお前に惹かれてたんだよ。
問題は俺がお前を好きになることだ。」
海斗君はバツが悪そうな顔をして、髪の毛をくしゃっと掻き乱す。
いつもの海斗君が見せない弱さ。
今分かった。
あたしと海斗君の間に感じてた壁は作られたんじゃなくて、最初からあった壁が壊れようとしていたんだ。
距離が近くなればなるほど壁が薄くなっていって、お互いに自分の気持ちが分からなくてギクシャクしてしまったんだ。
そして最後に絞り出すような声であたしに訴えた。
「だから…もう今日で会うの止めるなんか言わないでくれ…。」
……へ?
海斗君の訳の分からない発言を聞いて涙がスッと引いてしまった。

