見るとそこにいたのは意外な人物で、心配そうな顔をしている村田だった。


「どうしてこんなところで泣きそうな顔してるの?
何かあった?」

村田は優しく問いかける。


村田にこんな言葉をかけてもらう日がくると思わなかった。


前まで大嫌いだったその笑顔がそんなに嫌いじゃないことに気づいた。
でも今はそんな優しさはいらない。


あたしは “ううん。大丈夫だから” とだけ言って、村田の手を払った。


すると村田は急に真剣な顔になって、ちょっと来てと言ってあたしの手を引っ張る。



これを海斗君が不機嫌な顔で見ていたなんて、この時のあたしはまだ知らない。