教室に帰る途中に前から海斗君が歩いてくるのが見えた。
でも目が合いそうになった瞬間、反射的にそらしてしまった。
止まりそうになる足を必死に動かす。
通りすぎる時、チラッと海斗君を見るとバチッと目が合って、海斗君は不機嫌な顔でずっとあたしの方を見ていた。
今度は海斗君が先に目をそらして歩き出す。
──待って!と引き止めようとした瞬間、誰かが「岸田君!」と叫ぶ声がした。
そしてあたしの横を女の子が綺麗な髪をなびかせながら通りすぎて、海斗君の腕に抱きつく。
出そうになった言葉をグッと飲み込む。
あの子は海斗君と同じクラスの青山さん…?
海斗君の抱きつかれた腕を見ると、なぜか胸がキュッとなって苦しい。
海斗君は抱きつかれた腕を離そうしないで、何も言わず突っ立っている。
きっと青山さんは海斗君が前に言ってたフラれても話しかけ続けている子だ。
なんで海斗君はその子の手を離そうとしないの?
前は、あんなに嫌そうにしてたのに。