岸田君はスッと立ってあたしに近づいてきた。

「なな、何?」

パッと手が目の前に出てきて反射的に目をつぶる。


カチャッと音がして目を開けると、あたしの眼鏡を持った岸田君がいた。


「ちょ、ちょっと返してよ!」

岸田君は返す気がないらしく、あたしの言葉には反応せずに前髪を掴んできた。


「ちょっ!今度はなに!?」

突然の岸田君の意味不明な行動が理解できず、あたしだけテンパっていた。


岸田君はというと「ふ~ん。」と言いながらあたしの顔をまじまじと見ている。


な、何!?
あたしの顔に何かついているの?
しかもやっと喋ったと思ったら ふ~ん だけだし。
何か他にないの!?


「岸田君!さっきからなんなの!?
言いたいことがあるなら言ってよ!」


あたしは岸田君の目線に耐えられなくなって、目の前の手を払いのけた。