体育の準備運動。
下らないと思ってか、他の女子は大きな声を出さない。
だが、しかし!
私は体育が大好きなのだ!
大きく、息を吸って、体育委員の女子の後に続けて、

「ごぉーっ、ろっく、しっち、はぁちっ!!」

体育委員の女子は目を見開き、他の女子はびっくりしたのか声も出さなくなった。
外周していた男子の視線までもが刺さる。
私真面目だと思う。

「ごぉーっ、ろっく、しっち、はぁちっ!!」

にぃに、さんし、を言わないので、勝手に言わせてもらった。
ぴーっ、と先生の笛が鳴る。

「えー、今日は百メートル走をする。」

先生の発言に周りからは、えー、だの、やだー、だのの声があがる。
ちなみに、私は万々歳である。
短距離走なら大好きだからな!

「じゃあ、」

と出席番号順に、2人ずつ走り出していく。
みんなは胸が揺れるのが気になるのか、男子の視線が気になるのか、まったく本気ではない走りだ。
私は最後から二番目で、山田 ノアちゃんと走る。
山田ちゃんはハーフってやつだ。

「じゃあ、猫田と山田ー、」

オンユアマーク、という先生の声が聞こえる。
セェーット、という声を潜めつつ何処か緊張感のある声で、先生は続けて言う。
その声に合わせて腰を上げて、

「ゴゥッッ!!!」

バッ、と走り出す。
いつもよりかは好調だ!
あと、少し!
後ろからの足音に抜かされてたまらるか、と思いスピードを上げる。

「んに"ゃあぁあっっ!!!」

最後は最早飛び込んで、一番に着いた。
後から山田さんが着いた。

「だ、大丈夫?」
「うん、大丈夫。」

差し出された手には握らずに、自分で立ち上がる。
ほら、砂付いた手で触るなんて、アレでしょ?

「猫田、11.01。
山田は、11.90。」

よっしゃ、記録更新、と思って私はスタート地点の方へ走った。