「あと、陽斗の話だけど。こっちは覚えてる?」
『・・・覚えて、ない・・・。』
陽斗、という響きに心臓が跳ねた。
さっきの電話がもし、要くんだったなら。早く掛け直して、謝らなきゃ。
・・・って、何を?
他の男が電話に出たこと?他の男に、キスされたこと?
・・・違う、他の男とキスしたこと。
「陽斗とは、もう話してあるからって、言ったんだよ。お前は何も心配すんなよ。」
『は?話すって何を?』
「どっちが勝っても恨みっこなし。お互い、全力尽くすのみ。」
なんだ、それ。
チェリーとローズの全力。
可愛いのは響きだけで、早くも胃もたれしそうな甘さ。
『仲間同士で女取り合うってこと?グロいんだけど。』
当人なしに、知らない間に進んでいた展開が悔しくて。
口汚さが、せめてもの抵抗だったのに。
「そうでもして、欲しいんだよ。」
優しい顔で、目を細めるから。
髪に触れる手を払えない。
『いつから私のこと好きだったの?全然ついてけない。汗』
「分かんねぇなー・・・
けど、前の彼氏と別れたって聞いたとき、ちょっと嬉しかったから。笑
あの時にはもう、好きだったのかも。」
『鬼畜・・・』
「なんでだよ。笑」
『私が航大を選ばなかったらどうする?』
「まぁ・・・そのときは、約束果たすか。」
『約束?』
「親友になるって、言ったろ。」
お前がかわいそうだから、と意地悪く笑ったけど。
私がどれだけ嬉しいか
きっと航大は知らない。