携帯の震える音で目が覚めた。

暗い部屋のサイドボードの上で青白く光る携帯。
私・・・寝てた・・・?


手を伸ばそうとしたところで、後ろから伸びてきた手に取り上げられた。



一瞬の間の後、


「・・・はい。」

頭上で聞こえてきた声も、掠れた鼻声。

これが航大の寝起き声なのかなぁと。私は体勢も変えず、ぼんやり思う。






「・・・ああ。薬は飲ませた。・・・うん。大丈夫、と思うけど。」



瞼が重くて、航大の声を上に聞きながら目を閉じる。

ちょっと寒いな、と感じると。
同じタイミングでぎゅっと、後ろから腰に左腕が回された。


なんか、すっぽり、って感じ。
あったかくて気持ちいい。

私、航大の腕の中で寝てたのか。






「・・・つーか、こんな時間にかけてくんじゃねーよ・・・。」




誰と話してるんだろ。

瀬名ちゃん?
ていうか、私の携帯だし。私にかかってきた電話じゃん。



窮屈な与えられたスペースの中で。うーん、と真上を見上げると。



「もうかけてくんなよ。」



綺麗な形の眉を寄せて眩しそうに顔をしかめた、航大。
これが航大の、寝起き顔。



画面をタップして通話を切ると。

私の手の届かない、反対側のサイドボードに置いた。








「・・・寒くねぇ?」


後ろから、私の首にキスするように顔を寄せて囁く。


くっつきすぎ。

なのに、微睡んだこの感じ。抜け出せない。




『寒い。喉も乾いた。』




シュッという、シーツの衣擦れの音。

ベッドを抜け出して、キッチンへ向かう気配。



そっと振り返ると、上半身を露わにして冷蔵庫を覗いている姿が目に入った。



つーか、なんで裸なの・・・

よく見ると、髪もサラサラペタンコ。シャワー?浴びたってこと?






顔ちっちゃいな。
羨ましい長身。スタイルがいい。


それに。

なんだその、肉体美。








水を二本抜き出して。
あくびをしながら、こちらへ戻ってくる。

目があった。





「えろ目で見てんじゃねぇよ。」


片側だけ上げて、笑む口元。


『見てねーよ。』


開けてくれたペットボトルを受け取りながら、悪態をつく。





水は口元を流れて、ポタポタと喉を伝ってシーツに落ちた。


愛しそうに髪を撫でる手が、優しすぎてくすぐったい。









だけど私は、こんな目眩に負けられない。


聞かなきゃ。

知らなきゃ。

知らずして、これ以上この男の腕に抱かれるわけにはいかない。








ローズの香りの

棘に触れる。