思ったとおり、理沙が席を外した途端

航さんがお会計を呼んだ。





「いいの?今日は理沙が払いたいんじゃないの?」

“食べなさい”
“飲みなさい”

王様みたいに振る舞う理沙は、久しぶりで可愛かった。



「いい。俺がやだから。」

「なら俺も出すよ。」

「いい、チョコは理沙子からお礼されたってことにしてやって。」



俺が知る限り、いつもこうなる。
航さんは理沙に、絶対お金を出させない。


“こいつの分”
“あいつの分”

そう言って、渡されたことも複数回。

思えば端々に、昔からちゃんと愛情は滲んでた。










「理沙、綺麗だね。」

「どうした、急に。笑」

「なんか、久しぶりに3人で会うと。
ああ、こんな顔するんだなぁって。」



航さんがいると。
こんなに、のびのびしてるんだなぁって。

下を向いて少し微笑む航さんが。
こんなに、いい顔してるんだなぁって。







だけど。

陽斗さんといるときの理沙は。



きっともう少しだけ。
女の、顔をしている。


陽斗さん、のキーワードを出すと。
途端に瞳の熱の温度が変わる。

あれは、きっと第三者じゃないと分からないレベルだけど。


だから俺は。できるだけ静かに陽斗さんの話題を避ける。












「結局、レオン預かってくれてさ。」

「あ、そうなんだ。よかったじゃん。」

「もっと早く連れて来いとか言われて。
頭上がんねぇよな。俺、理沙じゃないと無理かも。」

「かも?笑」

「うるせぇな。笑」







こんないい男に、うっかりこんな顔をさせる。

そんな理沙は、やっぱり秀逸。