人生で三度めの

男の、部屋。

ついつい、直近のサンプル剛田大の部屋と香りが浮かんだ。




「ごめん、自分で誘っときながら。
まさか来てくれると思ってなかったら、荒れてるな。」


恥ずかしそうに笑いながら、忙しく落ちた服や雑誌を拾う姿が。
彼の今日の大人な出で立ちに全然合っていなくて笑えた。


『おかまいなく。取って食ったり、しないんでしょ?笑』

「しないって。適当に座ってて。」


お茶くらい私がするよと言いかけて。
彼の真剣な横顔に、言葉を引っ込めた。

ここは、大人しく座って待とう。


黒い皮のソファには、開かれたままの音楽雑誌が数冊。
大きなテレビの前に並んでるサボテンが、ぷっくりした葉っぱで大切にされてることを教えてくれた。






「ほんと、あんま見ないで。笑」


柔らかいコーヒーの香りを連れて、戻ってきた彼は。
うっすら頬が赤くて、私から視線を逸らす。


『なんか、陽斗くんらしい部屋だね。落ち着く。』


驚いたように目を見開いて。
ほんの僅かな沈黙の後、彼は柔らかく笑った。


「よかった。」




柔らかく香るコーヒーの湯気が、陽斗くんの横顔と溶けて。

ここは安心だな、と無条件に感じた。