「・・・ん・・・ こうさん?」




急にこみ上げる感謝に、チョコを起こせずにいると。

自ら、薄く目を開いた。




航「・・・はよ。ありがとな、チョコ。」

チ「・・・いやいや。うぉー・・・もうこんな時間かぁ。」



一回ノビをして、意外にあっさり起き上がる姿に。

もしかしたら、寝入って短かったのではないかと思い当たる。




航「送ってく。一時間後くらいでよければ。」

チ「や、大丈夫。このまま事務所行きたいから、外でタクシー拾うわ。」






なんか食うものあったかな?

寝起きのチョコは、ふわふわの髪でますます犬のようで。
食べ物を、与えたくなる。








チ「理沙、超反省してたよ。
全部自分のせいだって。今日からは店の車で帰って、寄り道もしないってさ。」

航「・・・そっか。別にあいつのせいじゃねーけど。」

チ「陽斗さんには、どーすんの?」




さっきまで車の中で考えていたことをずばり刺されて。




航「・・・どーすっかなぁ。って、チョコ知ってたんだ。」

チ「俺は大抵のことは、理沙子と共有してるよ。笑
陽斗さんのことだから、理沙子以上に自分を責めそう。」

航「そーなんだよ。知っちゃったら、あいつ睡眠捨てそうじゃん。」

チ「ありえる。笑
“もう俺寝るのやめる、寝なければ迎えに行ける”とか普通に言いそう。」








だけど。

もし俺が逆だったら、と考える。






たとえどうしようもなくたって

理沙子に関する大事なことは

何だって、知っておきたい。






それで俺自身が傷ついたとしても、理沙子の傷を知らずに生きるより

痛くて情けないことはない。




理沙子が傷つき、恐れるものがあるなら。

二度と見せたくないと。
次はこの体が盾になれるようにと、心から願う。






知らずにいるより

知って苦しいほうが、ずっと楽だ。


陽斗は、そういう気持ちでハワイで俺に連絡をしたはずだから。







航「あいつを刺激しすぎない程度に、言うかも。俺だったら知りたいから。」

チ「そだね。それが正解かも。」





華奢に見えて、脱げば俺なんかよりずっと割れてる腹筋が。

頭から被るTシャツにサッと隠れた。