『久しぶりのオフなんでしょ?何するの?』
「そうだね、どこ行こうか。」
・・・ん?
『・・・どっか行く派なの?家でゆっくりとかじゃなくて?』
「俺はどちらでも。理沙に合わせるよ。」
バックミラーに上手く目を配りながら、当たり前のように運転を続ける。
けど。
なんか、これ。
微妙に誘われてないか?
『・・・。』
「・・・ぷっ、」
沈黙に負けて吹き出したのは、要くんが先だった。
「理沙の顔。笑
苦悩してるみたいだな。」
この先の角を曲がれば、私の城が見える。
「ごめんね、当たり前に誘えば、当たり前に来てくれるかなと思って。笑」
斜め上でクスクス笑う横顔を、シートに深くもたれたまま見上げる。
『・・・いじわる。そんな約束したっけ?とか思っちゃったじゃん。』
「ごめんごめん。けど、そう思って来てくれればいいな、とも思ってた。」
マンションのエントランスの少し手前で、ゆっくりと車は動かなくなる。
「今週の日曜の午後なんだけど。俺と一緒に過ごしてくれる?」
エントランスの光で逆光した、要くんの斜め顔には。
何時も私を蕩けさせる、柔らかな微笑み。
ひどく優しくて、少し疲れても見えて。
痩せたな。
無意識に、綺麗な線で描く輪郭に手が伸びそうになって。
ぐっと手を握りしめた。
『いいの?私とで。』
「オフって聞いたとき、理沙子しか浮かばなかった。」
唇をかむ。
要くんのストレートな表現に、私は回答を未だ見つけられてない。
『日曜なら、お店も休みだし。要くんの好きなことしようよ。』
「まじ?よっしゃ~!」
上半身を預けていたハンドルに、急におでこを埋めたから。
辺りに、軽やかなクラクション音が響いた。
『うわっ!』
「やべっ!笑」
サングラスの隙間から覗く、目の横の笑い皺と。
綺麗な逆三角形になる口元。
癒されてる、なんて打ち明けたら。
この人はさらなる“完全無欠”を与えてきそうだと、そっと怖くなる。