そして八野くんは私の好きな人でもある。



「久しぶりだな、篠原(しのはら)」



そう言って手に持っていた本を私の頭の上に乗っける。

慌てて本を取って、今にも緩みそうな頬を本で隠した。



「そうだね。 約1年ぶりだね」



私と八野くんは『元クラスメイト』
第一印象はとっても怖い人、だった。


だって話しかけた人1人ずつ睨んでいくんだもん。誰だって怖いよ。


……だけど。



_____*

突然、雨が降った去年の春。


カバンの中に入っていた折り畳み傘を広げて帰ろうとしたとき、隣の女の子が困った顔をしながら空を見つめていた。



『うわあ、雨だ。 傘なんて持って来てないよお〜』



私はそのとき先生に雑用を頼まれて周りには隣にいる女の子のみ。女の子の制服のリボンの色を見て1年生とわかった。

ごくり、と生唾を飲み込んで開いていた傘を閉じて彼女に渡した。



『使っていいよ!』


『えっ… でも…』


『お母さんが迎えに来てくれるからちょうど余ってたんだ!』