「た、たしかに暖かいねっ……」
暖かいんじゃない。もう熱いぐらいだ。
小指同士が触れて迷わず篠原の小指に自分の小指を絡ました。
篠原は驚いたように俺の顔を見たように感じたけどいま目を合わせたら顔が赤いのがバレてしまうので逆を向く。
「や、八野、くん……?」
「うるせえ、しゃべんな」
ああー、俺ってほんと意気地なし。
ヘタレだ、ヘタレ。
友だちになりたいんじゃない、恋人になりたいのにどうしても『好き』って言葉が出てくれない。
「篠原は、さ」
「う、うん」
「友だちいないの?」
篠原が人としゃべっているところを見たといえば人助けしてるときしかない気がする。
移動教室だって1人だった気がする。
「わ、私……、うざがられるの」
「……は?」
悲しそうな篠原の声に地雷踏んだかもって焦ったけど…うざがられる? どこが?
「私、頭で『これを言ったら嫌われるんじゃないか』とか考えてしまっておどおどしちゃうの。それがうざいって…言われたことあるから」
俯いて絡めあっている小指に力を入れた篠原。
髪が邪魔して顔は見えないけどきっと悲しそうな顔をしてるんだろう。
「なんか、ごめん」
「ううん! いいの! むしろスッキリした!」
俺が謝ると篠原は一気に顔を上げて首を左右に振る。
「言えてよかったよ! ありがとう、八野くんっ」
いつもの笑顔。まるでパッと花が咲いたような笑顔。