「知ってるよ、そんなこと」



なに、それ。期待するじゃんか。

もしかしたら八野くんも私みたいに私の名前を探してくれたんじゃないかって。



「も、もうすぐ2月だね」


「ああ。そうだね」



八野くんはいつもそっけない返事をするけどちゃんと聞いてくれてるから嬉しい。

私にとってのヒーローは八野くんだ。



「……金曜日」


「うん?」


「はちみつのなんか作って来てよ」



私と八野くんは水曜日と金曜日が当番。
だから金曜日も会える。

あと、また八野くんの美味しそうな顔を見れると思うと嬉しくてついついにやけちゃう。



「うん! もちろん!」



鼻歌を歌いたいほど嬉しいけど我慢、我慢。



「やっぱり、だれもこないね」


「ああ。 まあ、あんまりいい本ないからね。
けど俺の好きな本ばっか置いてるから好きだけど」



最後の『好きだけど』のセリフにどきっとする。

ううう! 私に言ってるんじゃないのに!



「ふ、冬っていいよね!」


「あれ? 篠原って冬好きだっけ?」


「ううっ」



そうだった。どきっとした心臓を隠そうと言ったけど私が冬が苦手なの八野くんしってたんだった。