コツコツコツ…。
足音が人通りのない道に二人ぶん響く。
学校からの帰り道。
いつも通る二人だけの道。
でも私は、気まずかった。
隣にいる彼と。
昨日、彼と大喧嘩をした。
悪いのは私だ。
わかっている。
謝らなければいけないことくらい。
足元ばかりに注がれていた目線をふと右側に向ける。
彼の綺麗な横顔が見える。
彼はこっちを見ない。
まっすぐに、まるで私なんていないように前を見ていた。
そして、私はまた目線を足元に戻した。
さっきから、この繰り返しだ。
足元に目がいくのは、すねているからでも、悲しいからでもない。
不安なのだ。
ただどうしようもなく不安でしかたない。
彼が少しずつ歩くペースを速める度に、言いようもない不安が襲う。
追いていかれるのではないか…。
私の隣から離れてしまう。
あぁ、もうすぐ二人の分かれ道がくる。
言わなければならない言葉はわかっている。
後は、勇気だけ。
私はまた、右側を見た。
彼はとても綺麗な人だ。
彼はとても美しい人だ。
そして、もう一度だけ足元を見て彼と歩幅をしっかりと合わせる。
呼吸も合わせる。
そして、彼の前に飛び出した。
「ごめん。本当に昨日はごめん。」
彼の優しい顔だ。
あふれだす涙は安堵したからではない。
美しいからだ。