あまりに悩みがエスカレートすると、たいていろくなことがない。
立ち上がった拍子に柱にぶつかったり、いつもと同じ調子で歩いてるつもりなのに扉の角に小指ぶつけたり、フライパンの隅で火傷したり。
そんな小さな痛いことが、胸のキリキリとした痛みに反響する。
そしてとんでもない八つ当たりをするのだ。
どうせあの人は明日が当然訪れると思ってるんだろうなぁとか、昼間っから呑気にお茶してるのに話題は愚痴だけなんてくだらない人たちだわとか、この子たちなんてまだ苦労のくの字も知らないんだろうねとか、要するにループして、私に悩みがなさそうと言った誰かさんと同じ位置に落ちぶれる。
心を覗くメガネもなければ、悩みを測る天秤もない。
それを思い出させてくれるリセットボタンが赤い電車なのだ。