空の果てに、願いを込めて

百合を無事にあの豪邸に送ることが出来た私は、また同じ路上を引き返していく。



季節は冬で、それも灰色の雲に覆われている夜だ。



昼間よりも気温は低下し、コート、マフラー、手袋と全身を防具で守っていても、やはり寒いものは寒い。



雪で滑らないよう慎重に歩き、それに伴い道がギャリギャリと音を立てる。



街灯はあるものの、唯一の頼りが今にも消えそうに瞬きをしている。



「これは早めに帰った方が良さそう」


口から出た白い息が、瞬きをする街灯でよく見える。



これだから、冬は嫌いだ。


暗いのも、嫌いだ。


雪に包まれる自分が、嫌いだ。


肩に伸びるミディアムヘアが、庇ってくれていたマフラーから逃げ出していく。



風の力を借りて、優雅になびいている。



「今度からイヤーマフしていこ」



雲の間からちらつかせる欠けた月に、小さな宣言をし、私は足を早めた。