携帯の時計を見れば、10分が経っていた。



「百合に、怒られちゃうな……」



昔はずっと2人で一緒にいて、お嬢様の百合を守るのが私の使命だと思っていた。



けど、それも彼氏の中月くんの役目になったし、私の使命は無くなったわけで。



「私って、百合に依存してたんだなー……」



私の唯一の居場所は、無くなってしまった。



「少し、中月くんに妬いちゃうな」



私は誰が聞いていたとも知らずに、空に向かって息を吐いた。



「槙原……さん?」



不意に呼ばれた私の名前に、少し驚いて声の主に顔を向ける。



「あ、えっと……?」



「覚えてねーかな?俺、クラスメイトなんだけどな」



正直、わからない。



クラスメイトと関わる機会なんかなく、いつだって1人だ。



「それじゃあ、改めて自己紹介させてもらうよ。吉川 智也。バスケットボール部に所属しています」



「…………よろしくお願いします?」



「なんで疑問文に」