空の果てに、願いを込めて

そろりそろりと、自分の家のこたつなのに恐る恐る入っていく。



「恐る恐る入らなくても」



その様子が、中月くんにとって面白かったらしい。


クッキーを口の中に含み、笑っていた。



今思えば、彼と話したり、ましてや家で2人っきりなんて、初めてのことだ。



中月くんとの初めて記念日が、今日になるのだろう。



そもそも年を重ねていく度に、脳内に残っているかどうかの問題なのだが。



「それで、私の家に来ても特に何も無いけど」



バスケットに盛られていたクッキーは、だんだん減っていき、今では残り少ない数となっていた。



「別に何もしなくていい。俺が来たくて来ただけだ」



左様ですか。ならば、私の家をターゲットにしないでくださいや。



私は百合が大切だし、その大切な存在をこんな些細なことで壊したくない。



百合だって女の子なんだもん。親友の家に彼氏がいて、しかも2人っきりだったら浮気を疑ってしまう。



私のせいで2人をバラバラにしたくない。