「人魚伝説?」

彼は眉間に皺を寄せ、
薄紫の瞳で男を睨んだ。


「人魚とは海神の遣いではないのか。
それを連続殺人犯呼ばわりするなど
どうかしている…。」


「そんなんだけどなぁ。

でもよ。
人魚の聖地と呼ばれるルーンの海に
行った船人たちは
誰も帰ってこないんだ。

唯一生きて波に打ち上げられた男は
両足と右腕を無くし
ただ一言

【人魚が…】

と言って
覚めぬ眠りについたんだ。」


これを聞いてもそう言ってられるか?と
真剣な顔つきになって彼を見つめる。


彼もまた
瞬き一つせずに男を見た。


「船人を探しに行った
家族や国の騎士たちも
帰ってくることはなかった。


そして
海岸に打ち上げられるのは、


骨や肉片。」


彼は喉を鳴らした。



想像するだけでも酷い。。



しかしまだ彼の中で
それを人魚のせいだとは
飲み込めなかった。