「ふぁ~朝か」

私は目覚ましの音で目を覚ました。
ーーードタバタ
うわ...また朝から騒いで...
私は呆れながら自分の部屋を出て階段を下りた。

「快兄っ、僕のご飯取らないでよ~!」
「何言ってんだよ。誰もお前の飯なんか取らねえって。」
「快斗、玲、朝から喧嘩しないで。」

う、うるさい...
朝からこんな人たちの言い合いに巻き込まれたくないな。私は物音をたてないように台所に入ろうとしたけど。

「あっ、一架姉ちゃん!おはよ!」

あっけなく見つかった。

「うっ...玲おはよ」
「一架おはよ。今日遅いね」
「うん。昨日遅くまで課題やってて。それこそ悠兄たちこそ早いね、」
「俺は快斗と玲に起こされた感じかな」

悠兄は少し笑いながら答える。それを聞いた玲が言う。

「違うよ!快兄が僕のこと叩いてくるから!」
「玲が全然起きないからだろ。それより一架、早く飯食べないと学校遅れるぞ。」

快兄が私のことを見て言った。

「そうだね。」

私は篠宮一架。4人兄弟の3番目。私の上には快斗、悠斗っていう顔も性格も全く似てない双子の兄がいる。そして、下には玲っていう1人の弟。私たちはみんな同じ高校。快兄、悠兄が3年生、私が2年生、玲が1年生。だから必然的に...

「行ってきまーす」
「姉ちゃん待ってよ」
「玲、いつも遅い」
「悠兄まで...」

朝から4人一緒に登校ということになるわけで...。
学校に着くなり、女子たちがキャーキャー騒いでいる。私はよく分からないけれど、快兄と悠兄は学校で1、2を争うイケメンらしい。玲は高校生なのに第一人称が“僕“だから可愛いって人気。ましてや3人ともファンクラブまでできてしまうくらい。そんなめんどくさい兄弟と別れて、教室に入ると美希と由希が駆け寄ってきた。この2人は小さい頃からの親友。

「美希!由希!おはよ~」
「一架おはよ!」

そう、この通り私の周りには双子が多いのです。双子ってそんなにポンポンと産まれるものなのかなぁ?...って考えてたら誠が笑いながらこっちへ来た。こいつもまた私たちの幼なじみ。

「一架、朝からおもしれー顔すんなよ」

ってお腹を抱えて笑っている。うるさい、私はそう言い返した。でも美希はそれを無視するように違う話をした。

「そういえば、今日新しい先生来るらしいよ」

そんなどこから聞いたのかよくわからない噂を話す美希は世間話好きのおばさんみたい。でも、その話が本当だったら...。

「それってこのクラス?」

由希が不思議そうに反応した。

「もちろん!」
「でも、町田先生は?」

町田先生っていうのは私たちの担任の先生。40歳くらいの熱血教師。

「俺もその話聞いた。町田はなんかあったんじゃねーの」

誠が無関心そうに答える。

「ふーん」

その時、教頭先生が教室に入ってきた。

「はい、みんな席について」

手をパンパン叩きながら教卓の前に立つ。

「えー少し前から町田先生は体調が悪くてなしばらくの間休むことになった。その間だけだが、新しい先生に町田先生の代わりとしてこのクラスを担当してもらう。菅野先生!」

教頭先生がドアの向こう側に向かってそう言った。ドアの方を見ていると黒縁めがねをかけていて、身長が高くすらっとした、世に言うイケメンが教室に入ってきた。その人を見た女子たちがキャーキャー騒いでいる。男子はあまりのイケメンさに驚き、開いた口が塞がらないといった様子だった。...って!こんなこと言ってる場合じゃない!!

「また男が増える...」

その理由は、この学校の新人教師が住みたいと言えば私の家に居候する仕組みになっているから。自慢じゃないけれど私の親は大手企業の社長でこの学校の教育にも関わっている。そんなわけでだだっ広いあの家にはたまーにうちの高校の先生が住んでいる。...っていってもここ最近はなかなかそんな人はいない。わざわざそんなことしようと思う人の方が少ないのかもしれない。私の独り言を聞いた隣の席の美希が話しかけてきた。

「いーじゃん!あんなイケメンだったら」
「もういらない~可愛いお姉さんとかがいい!」
「え~」
「だって、快兄、悠兄、玲だけでもいっぱいいっぱいなのに恵人くん、翔汰くん、飛鳥くんまでいて...」
「すごいわ、やっぱり。これぞイケメンパラダイスって感じ。」

その会話の向こうで菅野先生が自己紹介を始めた。

「町田先生の代理できました、菅野純也です。えーっと、少しの間になると思うけどよろしくお願いします」

を最高の笑顔付きで。大半の女子たちはもうそろそろ溶けて無くなっちゃいそう。
...あの人はうちに来るだろうか。こないでほしい。そう思いながら今日一日が始まっていく。