「ふぅ……もう終わっちゃった」
持ってきた荷物は少し大きめのボストンバッグ一つだけ。
タンスに服を入れ、完了。
家具は全部備え付け。
まあ、当たり前なのだけれど。
そして、お母さんの写真とお花を置く。
「お母さん、なんとか志望校に合格できたよ。寮も外見ボロかったけど、中意外と綺麗なの。今度見せたいな」
写真を撫でる。
いつの写真だっけ。
……あ、そう、わたしの小二の誕生日に夢のテーマパークに行ったときだ。
そのとき、二人で撮った写真。
パレードを見終わって、そのときに優しそうな老夫婦に撮ってもらった。
何年も前の話だけど、初めて行った夢の国。
今でも鮮明に────って程じゃないけど、覚えてる。
そんな幸せな日々がある日突然跡形もなく消え去るなんて。
…………やめよ。
そんなこと考えてたって、お母さんは戻ってくるわけじゃないし、その事が変えられるわけでもない。

