**-- other side Three --**
それから、あの不倫相手の人からの電話。
彼はしきりに住所を教えてほしいと頼み込んでいたけど、小峯栞の涙を見たあとだったから余計に教えちゃいけないと感じた。
ここまで徹底的に隠し通してきたものを、俺なんかの勝手な判断で教えるわけにはいかなかった。
それと、もしかしたら少しだけ、ほんの少しだけ、声しか聞いたことのないその彼に嫉妬していたのかもしれない。
普通の恋愛ならまだしも、不倫は俺には経験のないこと。
引っ越し屋に守秘義務があるのかどうかは定かじゃないけど、あの時の判断は間違いじゃなかったと思う。
実際、小峯栞にその話をしたときだって何とも言わなかったんだから、たぶん俺は正解のほうを選択したんだ。
でも、どうしてなんだろう……。小峯栞の前では、俺はどうもいろいろキツいことを言ってしまうらしい。
薄情者で泣き虫で、気が強くて力持ちだなんて、男でもキツいことを俺は平然と言ってしまうんだ。
普段なら言わないことなのにな。


