**-- other side
     Twenty five --**



医者や看護師たちがバタバタとせわしなく動く。


その間に、俺は思い出したように栞の結婚指輪を探した。


指から外れて転がっていった結婚指輪、俺と栞の初めてのお揃いの指輪を探した。


床に這いつくばるようにして、必死に結婚指輪を探した。


やっと窓際の壁のところで見つけると、俺はそれをポケットにねじ込んだ。


栞が残したものなら、たとえホコリでも取っておきたい。


俺がプレゼントしたネックレス、雪ちゃんが栞の誕生日に贈ったスリッパ……。


栞の私物……パジャマ、洗面道具にタオル、入院のときに荷物を入れてきた小さな旅行カバン。


それから、結婚指輪。


栞が生きた証。
栞がここにいたという確かな証。


栞が吸っていた病室の空気ごと、缶詰にしておきたかった……。





俺はこの日、栞の夫としての初めての大きな仕事を成し遂げた。


泣き叫びながらではあったけど、栞の最期を看取った……。