**-- Twenty five --**



婚姻届にサインをするときは、一般病棟のベッドの上、直貴と雪とヒデと、それから直貴のご両親が見守る中で、カチコチになりながら書いた。


名前を書くときもハンコを押すときも、手がプルプルと震えてしまっでヘタクソな字になってしまった。


たった1枚のヒラヒラとした紙がワタシと直貴をつないでくれる“赤い糸”。


馴れ親しんだ“小峯”という姓から“桃原”という新しい姓に変わる瞬間を、婚姻届が第三者として立ち会ってくれた。


もう“結婚していいのかな?”なんて迷わない。ワタシの歩く道は直貴の前に続いていた。


そこに着くまでには、いろんなことがあった……。


合コンという普通の出会いから始まり、追いかけてきた直貴に平手打ちをしたりもした。


クリスマスにはワタシがエイズだと知り、1回だけだからと直貴の胸の中で眠った。


大晦日には、あの川原の1本桜の前で直貴の気持ちを踏みにじってしまった。


あの場所は奇跡の場所。
大事な思い出ばかりが詰まっている。