**-- Three --**
部屋に着くと、桃原直貴は急に引っ越し屋さんに戻った。
トラックから荷物を部屋まで運び入れて、前の部屋を出るときにするはずだった会計を済ませた。
極めて手際よく順序通りに引っ越し屋の仕事をした。
「また会えるといいな、ね、小峯栞さん」
最後に少しだけ、桃原直貴は“引っ越し屋”の桃原直貴じゃなくなった。
「もう会いたくないですから」
バタンッ!
ワタシはそう言って、桃原直貴の鼻先スレスレのところでドアを閉めた。
ついでに鍵も思いっきり音を立ててかけてやった。
なんだか分からないけど、桃原直貴には妙につっかかりたくなる。
ワタシの新しい部屋は2階の角部屋で、部屋を1歩出るともう階段だった。
その階段を桃原直貴は弾んだように降りて、すぐにトラックを発進させて帰っていった。
――はぁ……。しんどい。
ワタシは荷物もほとんど解かずに布団だけ引っ張り出して、新しい部屋を観察する間もなく眠ってしまった。


