**-- Three --**
「世間の人らはとやかく言うけどさ、俺は別にいいと思ってんだ」
「理解があるのね」
ワタシはさっき完全無視と決め込んだのも忘れて、いつの間にか会話をするようになっていた。
「理解ね。そういうつもりもないけど、俺がもし旦那がいる人を好きになったら、あんたと同じように割り切れるもんかなと思って」
「奪っちゃえばいいじゃない」
「……でもあんたはしないよな」
「そうね。本気じゃないから」
「じゃあなんで不倫するの?」
「さあ、なんででしょう」
ワタシがそう言ったところで、ちょうど信号が赤になった。
夜の暗さに映える信号の赤。
ワタシの顔も、桃原直貴の顔も、その赤に染まった。
「俺はあんたじゃないから分からない」
「……」
――そっちから聞いたくせに変なヤツ。
ワタシは何も言えなかった。正確に言うと、話したところで桃原直貴には分からないから。
さしずめ、桃原直貴の言う“あんたじゃないから分からない”ってことだ。


