**-- other side
Twenty one --**
栞は、今までにも増して体調が悪くなっていた。
10月に入ってからは、見舞いに行ってもほとんど寝ている栞にしか会えなかった。
たまに起きている栞に会えたとしても、すぐに疲れてしまうようで、ヒデや雪ちゃんや俺も、栞と長く話はできなくなってしまった。
栞の体力の衰えを、時の流れがこれでもかと俺たちに突きつける……。
栞が眠っているのをいいことに、最近の病室では3人で泣くことも極端に増えていた。
秋の長雨が栞の体力を奪うのか、冷たい雨が降り続ける日は決まって、栞はずっと眠り続けていた。
そんな中、俺はヒデと雪ちゃんに結婚のことと教師になることを静かに打ち明けた。
2人とも、
「応援するよ」
「直貴がやりたいなら」
と言ってくれた。
でもそれは俺の両親とほぼ同じ意見で、教師になるほうだけだった……。
“結婚指輪をはめてあげることならば……”
そういう意見だった。


