**-- other side
Twenty one --**
「……私が言いたかったのはそれだけよ。あの時小峰さんと話したことはそれだけ。変なことは何もなかった」
「……」
まだそっぽを向き続ける俺に、香織はそう言った。
「……最終的に答えを出すのは直くんだけど、後悔だけはしないでね。お願いだから」
そう言うと、香織は何も言わない俺を残して店を出ていった。
テーブルには、飲みかけのオレンジジュースと千円札……。
2人分の会計には多すぎてお釣りもきてしまう。
香織はすごい女性だ。
俺と同じ歳なのに、精神年齢は俺なんかが足元にも及ばないくらい、はるかに高い位置にある。
母性に溢れた女性。
それが香織だった。
香織に喝を入れられて、俺はしばらく結婚のほかに栞にできることはないかと考えを巡らせた。
すると、やっぱり俺には、先生になること以外に栞にできることが見つからなかった。
香織の話を聞いて、栞が今でも俺が先生になることを望んでいると知った。


