**-- other side
Twenty one --**
“一期一会”という言葉は知っている。好きな言葉に挙げる人もたくさんいる。
一生に一度限りの出会いを大切にしよう、という意味だ。
でも……、
でも今からじゃ……。
「今から勉強したって先生になれるかどうかなんて……」
涙を見られないようにと、そう言いながら俺は香織にそっぽを向いた。
「じゃあ、直くんが今やってることって何?諦めたくないから大きなアザを作ってまでお父さんを説得しようとしているんじゃないの?」
「……」
香織の口調は怒っているわけでもなかったのに、俺は怒られている気分になった。
唇をキュッと噛んで、香織にそっぽを向いたまま、その問いかけに耐えた。
「……小峰さんは、私に“2ヶ月だけでいいから直貴を貸してください”って言ったの。それは、小峰さんの“一期一会”よ……」
「……」
香織は、俺を諭(サト)すように、静かに優しく言った。
でも俺は、それにも答えられなかった。


