**-- other side Nineteen --**
ここから走り去りたいだろうに、体が思うように動いてくれない悔しさ……。
泣き崩れる栞からは、そんな叫びが聞こえてきた。
何度も見てきた栞の泣き顔は、あの頃よりもはるかに俺の胸を締めつける。
抱きしめずには……いられない。
次に俺の口から出た薄っぺらい言葉の数々。栞の心までは届かないかもしれない。
でも俺は、細くなった体を抱きしめずにはいられなかったし、言葉をかけずにはいられなかった。
少しだけ……ほんの少しだけでもいいから、俺の気持ちが届いてほしい。
誰に届かなくてもいい。
栞にさえ届いてくれれば……。
俺を責めたいだけ責めてくれればいい、そう思っていた。
栞は泣き続けた。
今の栞にとっては、泣くことでさえも体力を消耗してしまうだろうに。
細い体を抱きしめる力を強めるたび、栞の体が消えていくようだった。
それは耐え難い真実だった。
確実に近い将来、樹紀みたいに冷たくなる栞の体……。


