**-- Nineteen --**



懐かしい直貴の匂いを感じた時、ワタシの鼻がおかしくなったんじゃないかと思った。


先に振り返った雪がハッ!と息を飲んだのを見る限りでは、雪にも想像がつかなかったんだと思う。


ワタシはまるで糸で操ってもらえないと動けないマリオネットのように、ピクリとも動けなかった。


「2人にしてくれる?」


半年ぶりに聞く直貴の声。
その声を聞いた時、ワタシの耳もおかしくなったんじゃないかと思った。


雪は何も言わず、ただコクッと頷いてその場から遠ざかった。


雪を見送ったあと、直貴はゆっくりとワタシの隣に来る。


直貴のゴツゴツした男らしい手と細めのパンツに包まれたすらっとした足が、目の端っこに嫌でも入る。


ベンチに静かに腰を下ろすと、直貴は口を開いた。


「……何て言ったらいいか分かんないけど……」


そこで言葉を詰まらせる直貴。


ワタシは目を開けていられなくてギュッときつく閉じた。


直貴の顔を見たら、いよいよ目もおかしくなる。