**-- another side Twelve --**



あたしは部屋に着くまで、すれ違う人や同じ電車に乗っている人、会う人全員に涙を見られないようにして帰った。


移動中も部屋に帰ってからも、ヒデくんからは何の連絡も入らなかった。


自分から“現われないで”と言ったくせに、メールや電話が来ることを心のどこかで期待しているあたし。


矛盾していて情けないけど、それでもあたしは否応なしに期待してしまう。


ケータイを開くと、ヒデくんて2ショットで撮った写真が待ち受けになっていた。


あたしはそれを、泣きながら違う画面に変えた。


栞ちゃんが病気で辛いときに、あたしなんかの失恋話なんて聞かせられないよ。


栞ちゃんのことだから“ワタシのせいだ”って自分を責めるに決まってるもん。


あたしと桃原さんだけでも、栞ちゃんをちゃんと支えてあげなくちゃ。


ヒデくんなんか、もう忘れる。
あんな正論ばっか言う人なんか、もうあたしには関係ない。


だけど……。
それは明日からでいいかな?