**-- Twelve --**
もう一度聞いてみても、直貴の返事はなかった。
どさくさに紛れて初めて名前で呼んでみたけど、直貴は無反応。ワタシを抱きしめたまま寝てしまったみたい。
どうにか腕の中から抜け出そうと何度も試してみたけど、寝ているくせに直貴の力は強くてうまく出られない。
起こすわけにもいかないし、無理に抜け出したら目を覚ましてしまう。
――どうしよっかなぁ……。
せめて布団だけでも取れれば、この体制のままでもなんとかカゼをひくのだけは免(マヌガ)れるんだけど。
ちょうど直貴の後ろにベッドがあるから、そこから布団を引っぱりたい。
――あともうちょい……!
ワタシは、うんと手を伸ばして布団をつかもうと試みてみた。
でもあと数センチのところで届かない……。
直貴を起こさないように布団をつかむためには、ワタシはどうすればいいのか。
――えいっ!
これしかないと思い、ワタシは一瞬だけ、直貴の体ごと布団めがけて前に押した。


