**-- Eleven --**
ワタシが放した手を直貴はまた握って、同じことを聞く。
ワタシは、その手の力と直貴の真剣な目に何も言えなかった。
「どっち?」
直貴は、ワタシの答えを急かすわけでも責めるように問い詰めるわけでもなく、ただ優しく聞いた。
「……自分で考えなよ」
そう言って、ワタシはまた手を放そうとした。
でも直貴の力は強く、ワタシがいくら振り払おうとしても“放すもんか”と言わんばかりにきつく握りしめられた。
「じゃあ言うけど……、笑わないで聞いて」
「なによ」
直貴はワタシの目を真っすぐに見て、そう前置きをしてから話しだした。
「栞はあまのじゃく。これが大前提。自惚れかもしれないけど、栞は俺のことが好きだと仮定する。そうすると、さっきの“大好き”は“大嫌い”の意味で間違いない。だけど、それもあまのじゃく故の言葉だったとすると、栞は俺に“大好き”と言いたかった。そういう結論。……違う?」
直貴はワタシが言ったことの裏を見事にかいた。大正解。


