**-- Eleven --**



ワタシは今、大晦日に直貴が連れてきてくれたあの桜の木のそばにいる。


直貴の辛い過去の後悔とワタシへの覚悟を話してくれた、直貴にとって大事な大事な場所。


ワタシにとっても、絶対忘れられない場所。


今までは2年おきにリセットして忘れてきたけど、今回はちょっと無理そうだ。


もう時間もないし、結局は断ってしまったけれどあんなにうれしい告白は初めてだったから。


だからワタシは、無性にここへ来たくなった。


この前のベンチに座って、この前と同じコンビニで同じお茶を買って、ワタシはただ桜の木を眺めているだけ。


違うのは、昼間だってこと。
直貴がいないってこと。
ワタシの病気の感染した経緯がはっきりしたってこと。


ワタシは、あの人に泣きわめいたり掴みかかったりはしなかった。一方的には責められなかった。


ワタシのほうから誘った不倫だったんだもの、あの人に全部非があるわけじゃない。


本気で好きになってくれたことは素直にうれしいと思う。