**-- other side One --**



だってそうじゃないか。
あの平手打ち一発で、ほんの一瞬気を抜いただけで強烈・痛烈な一発が俺の左頬を直撃したんだ。


その平手打ち一発で俺の記憶は吹っ飛んだ。


覚えているのは、どうやらちゃんと店に戻れたようで、あの香水の彼女の隣に座ったこと。


「どうしたの?モモハラくぅん、ほっぺに手形ついてるよぉ〜」
という、甘ったるいその声。


それから、どうやらちゃんと自分の家に帰りつけたこと。


あの香水の彼女の名前は……、なんていうんだっけ。
しきりに自分の家へ誘うようなことを言っていたけど、俺は行かなかった。


……と思う。
というか、絶対そうだ。


彼女もいないけど、あんなキツい香水の彼女と寝るほど落ちぶれてはいない。


またまた主張するようだけど、俺は“ナチュラル”が好きだ。


小峯栞のような“おかしな”人より“ナチュラル”が好きだ。


ナチュラルが好きだ。
ナチュラルが好きだ。
ナチュラルが好きだ……ったはずだった。