**-- Prologue --**



彼――つまり、桃原直貴に出会ったのは、トモダチに無理やり連れていかれた合コンだった。


ワタシはそのとき最高に機嫌が悪くて、周りの男の子たちなんて見ていなかった。


機種変したばかりの最新ケータイをテーブルに置いて、ずっと時間だけを気にしてた。


別に約束も予定もなかったけど、ただパカパカ開いたり閉じたり、つまらない合コンの時間つぶしのつもりだった。


電話も来ないし、メールだってもちろん来ない。待っているのは合コンが終わること、それのみ。


適当にカクテルを飲んだりサラダをつまんだりして、とっくに席替えをしてそれぞれいい雰囲気になっている“なった気カップル”を冷めた目で見ていた。


この“なった気カップル”のうちの何組かは、今夜ワタシのケータイたいみたいにパカパカ股を開くかもしれない。


――股を開く前に心を開けよ!


ワタシはそんな女の子たちが嫌いだった。


ワタシを無理やり誘ったトモダチの雪(ユキ)以外は、みんな知らない女の子たち。