「どこ見てるんですか?」 「ちょっと懐かしいことを思い出しただけです」 「懐かしい、ですか」 「駄目でしたか?」 彼は答えなかった。 たださっきから私の頭にあってその手で髪を救って耳にかけてくれる。 蝉の声が儚く聞こえて風鈴が揺れた。 波のざわめきと同じくらい、水羊羹を咀嚼する音がやけにうるさい。