「先生?こんにちは」 木曜日の午後四時頃、決まって私は彼の家に遊びに行く。 古い日本家屋のこの家は住宅街のはずれにあって、私以外に彼を訪れた人を見たことがない。 奥まった森の向こうにある切り立った崖の上に佇んでいるからか、人はこの家に近寄ろうとしない。 引き戸を思い切り開けた。 奥まで見渡せる広い玄関に、彼の草履だけが行儀良く並んでいる。