ウソのコイビトになりました




「陽斗くん、どうし「なんで…」


「え?」


「なんで、俺じゃダメなんだよ」



そう呟くように言うと、ドアにもたれたままズルズルと座り込んだ。




「なんで、いつもいつも…」



聞いたことのない弱々しい声に胸が痛む。
でも、なんて声をかければいいのか分からない。



「……親も、アイツも、みんな兄貴ばっか…。なんで、なんで、いつも…」



俯く陽斗くんの表情は分からないけど、泣いてるんじゃないか、って思うくらい声が沈んでいる。



陽斗くんに何があったの?
何がこんなに追い詰めてるの?



……「アイツ」って誰のこと?